なぜだか、ずっと、強い女性が好きでした。
それも単純に、アクション系の見た目強い女性、戦う女性が好きで、見ていてスカッとして憧れてしまうのでした。自分自身は運動神経が鈍くて精神的にも弱く、すぐ落ち込んだりイジイジしやすい大人しめのダメダメタイプだったから、よけいにそういう女性に憧れたのかもしれません。
だからいわゆる女戦士系は全部好きで、アマゾネスから巴御前、水滸伝に出て来る一丈青扈三娘(いちじょうせいこさんじょう)などなど、心ときめかせるキャラクターでした。
女戦士の古典的代表キャラといえば、やはりジャンヌ・ダルクでしょう。ジャンヌ・ダルクものの映画はたくさんあるのですが、代表的なものはたぶんイングリッド・バーグマンのジャンヌと、数年前に作られたミラ・ショヴォヴィッチのジャンヌではないでしょうか。
百年戦争当時のフランスは、今のフランスと同じではなく、北部のごく一部がシャルル2世王の領地。血縁関係のあったイギリス・イングランドの王家と複雑に入り組んだ王位継承の争いや領地争いを続けていたのでした。フランスの田舎の農村ドンレミイ出身のジャンヌ・ダルクは17才の少女だったので、バーグマンやミラ・ショヴォヴィッチだとだいぶ年上という感じがしますが、それぞれ持ち味の出た特徴あるジャンヌ・ダルク像を演じていたかと思います。
イングリッド・バーグマンは、人間離れしてさえ見える整ったクールな美貌、それゆえに中性的とも言える雰囲気のため、当時既に30才ぐらいだったにも関わらず、少女ジャンヌ・ダルクの甲冑姿が凛々しく似合っていました。
ジャンヌ・ダルクは神のお告げを受けてフランスのために戦ったことになっていますが、この時代、教会を通すことなく直接神と対話した、と主張したことが後にイギリス側に捕われた際異端とされ、また、男装をしたことも禁じられたことだったので、魔女と断定される根拠の一つになりました。だいぶ後になって、ジャンヌ・ダルクの名誉回復裁判が行なわれ、聖人に列せられましたが、聖女ジャンヌ・ダルク、という清涼なイメージには、バーグマンの北欧的金髪碧眼のノーブルな雰囲気はぴったりでした。
ジャンヌ・ダルクは、当然のことながら、敵側のイギリスではやはり魔女とされていて、シェイクスピアの史劇の中では完全に悪役になっています。彼女が戦場で活躍したのは実は1年ぐらいなものだったのですが、それだけでこれほど有名になってしまった人の常として、伝説が先行し、現実の彼女がどういう人であったかは実はよく分からなくなっています。ただ、当時のパリ市民が残した日記に「ラ・ピュセル(乙女)」と呼ばれる少女戦士のことが出てきますから、実在の人物であるのは確かでしょう。歴史的には、実は戦功よりも、教会を通さないで直接神との対話をした、ということが、その後一世紀してから起きる宗教改革の先駆けであった、というところに意義がある、としている人もいます。
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