かわみ なみ 花とゆめコミックス 白泉社

(1)ノストラ探偵団ー1

 探偵ものという古典的ジャンルがあり、シャーロック・ホームズを始めとして、エルキュール・ポアロ、ミス・マープル、ブラウン神父などなど、私立探偵やアマチュア探偵(ミス・マープルはいつも編み物などしている地味なイギリスのシングルのおばさんだし、ブラウン神父に至っては神父さんときています)が探偵小説では大活躍します。

 現実には私立探偵の仕事はそういうものでなく、たとえば浮気の調査だとか結婚相手の素行調査みたいなせこい?ものが主で、殺人事件なんてあったら当然警察の管轄になるわけなのですが、そういうクローズドな組織の話を書いても、探偵や警官個人が勝手に動けるものでもないし話としては面白くない。それで私立探偵がフィクションでは主役、となるのです。

 そんな探偵ものをパロディ化してコメディマンガにしたのがこの「ノストラ探偵団」。昭和54年から月刊LaLaに連載されていた作品ですが、探偵もののパロディ漫画はいくらでもあるとはいえ、やはりキャラクター設定が面白く、ユーモアセンスも毒がなく素直で健康的なところが好きでした。

 とあるボロいビルの二階に小さな事務所を開いている「空地探偵事務所」。この事務所のメンバーはノストラ探偵団という3人の若い男性です。オフィスに依頼人からの電話が入り、まず受話器を取るのが「はい、ノストラ探偵団の空地小五郎です」。それから「アシスタントの坂東菊次郎です」「同じく助手の堀乱丸です」

 この3人が名乗ったとたん、依頼人は黙ってガチャ。「依頼人の90%はこの段階で切るな」「根性が足りん!」と言いあう3人ですが、そこでドンドンとドアを叩く音。

「先生、サラ金の方が取り立てに見えました」
 向こうにいるのは借金取りのYな恐いお兄さんたち。「今月もおバイトかしらね・・・」と、空の財布をはたく空地先生。

 空地小五郎は眼鏡をかけた真面目そうな青年で、菊次郎はいつも剣道着を着ていて武道家風なのにひよこ大好きな少女趣味の男。乱丸はアイドル系で可愛いけれども3人の中では一番しっかり者です。

 かわみなみは、当時の少女漫画家としては珍しくサッカーファンでもありました。「ルーレット・スタジアム」などはサッカーの試合に関連したエピソードだし、ブラジルから来たおかしな刑事の話もありました。サッカーボールを見ると興奮するこのブラジルの刑事は、豚汁を見て「ぶたじる・・・ブラジルを思い出す」とホームシックになって涙ぐんだり、菊次郎が冗談で貸したジャパニーズ・フンドシを、「これ・・・恥ずかしくない?」「いいんだよ。日本人は大事なポイントさえ押さえておけば、細かいことは気にしないの!」といい加減に説明されたのを真に受けて、「日本人えらーい!」と、リオのカーニバルの衣装にする、などと張り切るおおボケぶり。

 空地小五郎のライバル、「怪盗青薔薇」に至っては、お互いにやってることが間抜けでズレズレという点で、まさしくいい勝負、というナルシストのキャラクターでした。

 
 

(2)青薔薇参上!

 怪盗・青薔薇は、空地小五郎のもと同級生。空地探偵事務所にある日舞い込んだ挑戦状を見て,空地先生が乱丸たちにこう説明します。

 「依頼主の名を聞けばその成り金趣味も納得いくよ。なんとまたあいつなんだ。僕を一方的にライバル視して挑戦状を送りつけてはいつも仕事に失敗する男・・・・怪盗・青薔薇」

 「学業やスポーツや生活面で 僕とヤツとは似たような位置にいて・・・あいつはそれが気にくわなかったらしい・・・よく学年の席次を競った・・・」
「トップを?」
「 ・・・には ちと及ばないので、150番内に入るかどうかを・・・」
「やや迫力に欠けますね」
 乱丸の突っ込みにもじもじする空地先生。

「しかし こう何度も挑戦状を送りつけるなど、青薔薇は先生に秘かな愛情を抱いているのでは?」
「ちがいますよ 分相応って言葉を知ってるんですよ。有名な探偵社だと自分が負けるから零細企業を相手にしてるんだ。・・・まあ・・・ちょいと遊んでやりますか・・・」
 と、どっしり構えて現実を直視?する乱丸。

 豪華客船でパーティを開いていた、総毛皮のコートに金髪たてロールの成り金ナルシスト・青薔薇のところに乗り込んだ菊次郎と獅子刑事。獅子刑事は空地先生の従兄で、これもおかしなキャラクター。菊とはお互いにきゃらがかぶるせいか、ライバル意識を持ち合って、喧嘩が絶えません。おかげでチームワークがなく足を引っ張りあう二人は間抜けにも青薔薇につかまって・・・・

 しかし、地下室に監禁された二人は、青薔薇一味の脅しも何のその、見張りに酒を運ばせて図々しく注文をつけ、二人で喧嘩宴会を始める始末。
「なんと ふてぶてしく 図々しく あさましく 図太く あつかましい男たちだっ」
 自慢の美しい顔をひきつらせて呆れる青薔薇ですが、とりあえず人質を取って宿命のライバル空地を追い詰めることに成功したと思い、悪の組織に仕事も認められることを予想して、ひとりカクテルを飲んで音楽に合わせて踊るのですが・・・

「・・・あのさあ 漫画だからわかんないだろうけどさ 流れてる音楽なんだと思う?」
 これは部下のひとりごと。
「クレージーキャッツなんだよ」
「植木等のボーカル聞きながら パーティの仮装を選ぶのもおつなもの・・」
 と、青薔薇がすっかり自分の世界に浸っていたところに、空地小五郎がハムレットの衣装で参上。高校時代からの因縁対決がまたぼっ発するのでした。

 やはり今回も詰めが甘かった青薔薇ですが、これで懲りるような男ではありません。空地との宿命の死闘は更に続くのでした・・・・

(3)オレンジ青年団

 かわみなみの漫画のキャラクターのうちでも、ノストラ探偵団の3人や獅子刑事、怪盗青薔薇、といった面々の他に、オレンジ国の王女・ハマータ姫は特に楽しくてインパクトがありました。オレンジ国関連のストーリーは、別に『オレンジ青年団』という、ハマータ姫お守り役のオレンジ国国家公務員?の青年たちの「お役所コメディ」がありましたが・・・

 ハマータ姫のどこが特徴的だったかといえば、彼女は決して「吹き出し」のセリフをしゃべらないことです。彼女のセリフはなぜかぜんぶ活字でなく絵として、コマの中の地の部分に大きく書かれています。それも、ほとんど「ちょーだい ちょーだい」という同じセリフばかり・・・・

 彼女は丸顔にくるくるパーマ頭、眼鏡をかけていて、いつもネグリジェを着ています。妙に現実感のあるそのルックスとキャラは、実はかわみなみの友人で「はまださん」という女性がいて、その人をモデルにしたという話がどこかに出ていました。おまぬけキャラのハマータ姫にお婿の王子様を見つけることがボディーガードとお守り役の青年たちの任務なのですが、それというのも、ハンサムぞろいのオレンジ青年団、お婿を見つけないと自分たちのうちの誰かが姫の餌食になる、と、戦々兢々なのでした。

 こういうお昼寝大好き・脳天気キャラのハマータ姫も、とりあえずは一国の姫であるため、誘拐や国家間の争いのターゲットになることもあり、びんぼーな小国オレンジ国は、零細企業である空地探偵事務所に日本での姫のSPを依頼することに・・・そこで生じる隣国の工作員である誘拐犯やオレンジ国SP、空地探偵ら三つどもえに入り乱れたドタバタの間も、ハマータ姫は相変わらず極楽トンボを決め込んで、絶対に吹き出しに入ったまともなセリフをしゃべらないところがまた笑いを誘うのでした。



 



            

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