(1)女作者

 田村俊子の名前を知る人は、現在、日本近代文学史の専門家だとか、よほど日本近代文学に関心のある人に限られているのではないでしょうか。そして、彼女の作品を読んだ人となると、ますます数が少なくなるのでは・・・・?

 田村俊子は、実を言えば、明治以後の日本において、小説で生計をたてることができた最初の女性なのです。日本近代文学史では、小説家としては樋口一葉の次に名前が出てきますが、ご存知の通り、樋口一葉は生きている間にはついに書くことで生計をたてることができませんでした。

 田村俊子が活躍したのは、実質的には明治四十四年以降、大正初期の数年間にすぎません。創作に行きづまるとともに、彼女はカナダ・バンクーバーへ旅立ち、北米で11年間を過ごすことになります。昭和11年一時帰国、13年には再び海外に出て、中国・上海で雑誌編集に携わり、やがて第二次大戦末期の昭和20年に、上海の街路を歩く途中、まさに行路病者のごとく急死したのが62才の時でした。

 

 



            

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